20日の報告

こんにちは、宍戸です。
先週の木曜日、R,M,T,K,D,新參加のHさん,小生の7人で勉強會を行ひました。今囘の發題者は4人。Rからは「TPPについて」、Kからは前囘に引き續き「増税の是非について」、Hさんからはジェンダア論を皮切りに常識を疑ふことについて、小生からは「家庭の幸福は諸惡の本について」、それぞれ發表がありました。

RとKからは社會情勢をトピックにした發題が、Hさんと小生からは個人の内面を問ふ發題がなされ、いつも以上にテエマのバランスが良かつたやうに思ひます。勉強會を始めて1年目に相應しい手應へのある議論が行はれ、とても愉快な時間となりました。今囘も、それぞれの參加者の發表内容についての論及は發表者自身に任せるとして、小生の發題したテエマの内容を以下に舉げておきます。

−以下、レジュメから−
★「家庭の幸福は諸惡の本」について考へる★

1.太宰治「家庭の幸福」

「…所謂『官僚的』という気風の風洞は何か。私は、それをたどって行き、家庭のエゴイズム、とでもいうべき陰鬱な観念に突き当り、そうして、とうとう、次のような、おそろしい結論を得たのである。曰く、家庭の幸福は諸悪の本。」

あらすじ:ある官僚が、ラジオ録音のために路上で民衆と対話した。太宰はそれを家で聞いている。その官僚のエヘラエヘラ、ノラリクラリした態度に、太宰は憤る。そして想像は膨らむ。自分の業務を大過なくこなすことしか頭にないいい加減な人間にも楽しみはあり、それが、家に帰り良きマイホームパパ、良き夫、良き息子を演じることだ。そんな自分を疑うこともない人間が思い描く「家庭の幸福」というやつこそ、諸悪の本である、と。

2.最近良く見る“カラス人間”の群れ
 →子供の運動会で自分の子供をカメラで追いかけ回す若い親、孫自慢にうつつを抜かす高齢者etc
 →少子化核家族化の影響か?「自分の周囲」を守ることしか頭にない。

3.「家庭」の先にあるものを

 ※「修身斉家治国平天下」(大学)
   斉家=自分の家族を和合させ、見事に整えること。
   →「斉家」は「幸福」ということではない
 ※「士にして居を懐ふは、以て士と為すに足らず。」(論語・憲問第十四)
孔子が云う、いやしくも士という以上、道を以て天下を経営する志がなくてはならぬ。家庭の安逸を懐かしみ恋しがるようでは、まだまだ士ということはできないよ)

※参考資料
・『家庭の幸福』(太宰治
・『論語』(新釈漢文大系) 
  

 小生が今回の發題を通して言ひたかつたことは、正に發題通り、「家庭の幸福は諸惡の本」といふことです。かういふ言葉は今の時代にあつては文學の中にしか生き残つてゐないやうにも思へますが、なになにさういふこともあるまいとも思ひます。パッと見たところ、随分刺激的な言葉であるやうにも思へますが、かういふ感覺、或ひは氣分は少し前の時代までは多くの人に共有されていたことではないでせうか。かういふことを大聲で取り立てたり、人に強制したりすることは惡だと思ひますが、しかしながらこの感覺をすつかり失くしてしまふのは、人として情けないことのやうに思ひます。胸のうちに秘めたる感覺、氣分として持する時、初めて輝くものとなるやうに思へます。
 
次囘の勉強會も楽しみです。

平成辛卯 神無月二十四日
宍戸 大裕